佐々木宏明の法律ニュース

2013年1月18日 金曜日

共有物の分割と民事執行法59条,63条

・民法258条には裁判による共有物の分割の規定があります。

民法258条1項 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。



・この民法258条の第2項と民事執行法59条,63条に関連する最高裁判所決定があります。
それは,この規定に定められた競売を命ずる判決に基づく不動産競売について,民事執行法59条および63条の準用がされるかどうかについての決定です(最高裁第三小法廷平成24年2月7日決定)。

具体的には,共有物分割のための不動産競売手続において,無剰余取消し(民事執行法63条)が準用されるかどうか問題となり,結論は,準用されるというものです。

・民事執行の基本理念として剰余主義というものがあります。

 競売について,売却代金から差押債権者が全く配当などを受けられない場合(無剰余),売却を実施することは許されないとされています(無益執行の禁止)。

 また,民事執行法では抵当権などの担保権は,原則として競売による売却により消滅することになっています(民事執行法59条第1項,同法188条)から,差押債権者が全く配当などを受けることができない場合には,差押債権者の債権に優先する債権を有する担保権者は満足を受けられないにもかかわらず担保権を失うことになります。

 そこで,民事執行法は,剰余判断をして,その結果,一定の場合には,競売手続の取消し決定をしなければならないことを定めています(民事執行法63条,188条)。



・ここにいう民事執行法59条,および民事執行法63条とはどのような規定でしょうか。

・民事執行法59条は,売却に伴う権利の消滅等の規定です。

民事執行法59条 不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。
2 前項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失う。
3 不動産に係る差押え、仮差押えの執行及び第一項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない仮処分の執行は、売却によりその効力を失う。
4 不動産の上に存する留置権並びに使用及び収益をしない旨の定めのない質権で第二項の規定の適用がないものについては、買受人は、これらによつて担保される債権を弁済する責めに任ずる。
5 利害関係を有する者が次条第一項に規定する売却基準価額が定められる時までに第一項、第二項又は前項の規定と異なる合意をした旨の届出をしたときは、売却による不動産の上の権利の変動は、その合意に従う。



・また,民事執行法63条は,剰余を生ずる見込みのない場合等の措置についての規定です。

民事執行法63条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
一 差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。 
二 優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。 
2 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。
一 
差押債権者が不動産の買受人になることができる場合
申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
 
二 
差押債権者が不動産の買受人になることができない場合
買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供
 
3 前項第二号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。
4 第二項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。



・最高裁第三小法廷平成24年2月7日決定の原決定は以下のような点を考慮しています。


民事執行法195条は,「留置権による競売及び民法,商法その他の法律による換価のための競売については,担保権の実行としての競売の例による。」と規定されています。

 これはまさに,民法258条第2項の共有物分割のための不動産競売に対し,「担保権の実行としての競売の例」である民事執行法63条が準用されることになる,と考えることになります。

 また実際問題として,対象の不動産の換価時期を選べず,不動産の値上がりのチャンスを逸してしまうのは妥当ではなく,またそれにもかかわらず無剰余であるのに不動産競売を進行させるのは不合理であるといえます。


 原決定はこのような点を考慮したようです。



・同様の観点から最高裁第三小法廷平成24年2月7日決定は,原決定を正当として是認しているものと思われます。


投稿者 アスター法律事務所